しらさぎプロジェクト大学開放特許データベース(単願&発明者検索)

研究者詳細情報
研究者 東田 千尋
大学 富山大学 和漢医薬学総合研究所
研究室名 神経機能学分野
専門分野 神経化学・神経薬理学 天然資源系薬学
研究テーマ ・中枢神経における神経ネットワーク再構築を促進する分子機序の包括的解明
・アルツハイマー病、脊髄損傷、うつ病に対する根本的治療を目指した和漢薬研究
・グリア細胞と神経細胞の相互作用による、神経変性疾患の改善メカニズムの解明
・骨格筋萎縮の改善に有効な薬物の研究
・基礎研究を植物性医薬品開発、漢方方剤の効能拡大に繋げるための、ヒトでのProof of Conce
検索キーワード
脊髄損傷 / 神経回路網 / RET / Withanoside IV / 軸索修復 / ACK1 / 骨格筋萎縮 / 樹状突起 / substance P / シナプス形成 / estrogen receptor / 中枢神経損傷 / 記憶改善 / 痒み / MAP2 / Neuronal network / neuregulin-I / Vimentin / Memory improvement / 抗痴呆 / myokine / RT-PCR / myelin / NCマウス / PI3 kinase / antisense oligomer / sominone / 軸索 / Axomer / vimentin / 軸索輸送 / 骨格筋細胞 / Dendrite / 和漢薬 / transfection / neuron / 皮質脊髄路 / DARTS法 / withanolide類 / アストロサイト / Differential Display / Sproutin / 国際情報交換 / マイクログリア / 初代培養神経細胞 / 脳スライス培養 / 免疫染色 / mRNA / 介在ニューロン / 末梢性ミエリン / 大脳皮質 / アンチセンスオリゴマー / 運動ニューロン / axon / Spinal cord injury / 軸索伸展 / デノソミン / IGF1受容体 / sproutin / Sominone / アトピー性皮膚炎 / MEF2C / 神経ネットワーク / Western blotting / 生薬医薬品 / 軸索終末 / GFP
PR URL https://www.youtube.com/watch?v=8-6yx9uVYis
PRタイトル名 神経変性疾患や老年性疾患の克服を目指した研究
PR詳細文 (図) 神経機能学分野では、神経回路網が破綻することによって機能不全が永続あるいは進行する難治性神経変性疾患(主としてアルツハイマー病、脊髄損傷)をターゲットとして研究を行っている。神経回路網破綻のメカニズムと、それを改善させるストラテジーの鍵となる生体の分子メカニズムを解明することで、神経回路網が破綻した後からでもこれら疾患における神経機能を正常に回復させるような、根本的治療戦略としての“神経回路網再構築薬”の開発を目指している。 アルツハイマー病研究では、モデルマウスの記憶障害を顕著に改善する漢方方剤や生薬由来成分を見出している。さらに、これら伝統薬物由来の低分子化合物による新たなシグナリングの解析を、神経回路網再構築の鍵を握る分子を解明する視点で進めている。脊髄損傷研究では、モデルマウスの運動機能障害を顕著に改善する薬物を、伝統薬物の解析をもとに発見してきた。例えば新規化合物デノソミンは、ニューロン、アストロサイト、マイクログリアなど様々な細胞に対して、運動機能改善に寄与するような質的変化を与える。現在我々は、その多面的で新しい作用機序に、多層的・動的実験手法で迫っている。 このように、伝統薬物研究と神経科学を融合させ、創薬と病態解析へ展開させる独創的で有益なアプローチとして「伝統薬物-based 創薬」を提案し実践している。
特許

出願番号:2006-549013 / 特開番号:再表2006/068155 / 登録番号:5044782

漢方処方による神経回路網再構築剤および神経回路網の再構築方法

【課題】アルツハイマー病、老年痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン病などの神経変性疾患は、病因は異なるがいずれも神経回路網の破綻により、記憶・認知に障害を呈する症候を指す。これら有効な治療法の無い疾患に対し、既に神経回路網の障害が進行している状態からでも、神経機能を正常に近づけることのできる治療が求められており、この治療に用いる漢方処方を開発する。

【解決手段】培養神経細胞において、軸索と樹状突起の萎縮、前シナプス数と後シナプス数の減少を呈する状態を作製した。この状態の神経細胞に処置することで、神経細胞の神経突起とシナプスを正常状態に戻すことのできる漢方処方を探索し、三七人参および/または人参、黄耆、菖蒲、茯苓の抽出物からなる漢方処方が神経回路網再構築剤として有用であることを見出した。


出願番号:2006-177718 / 特開番号:2008-005731 / 登録番号:4997498

注意欠陥多動性障害の動物モデル

【課題】本発明は、ヒト注意欠陥多動性障害(ADHD)との関連性の高い新規なモデル動物を提供する。

【解決手段】PI3Kのサブユニットp85αの機能を欠損させた動物に被験物質を投与し、その行動パターンを神経科学的な観点で解析することで、注意欠陥多動性障害の予防および/または治療剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。従って、PI3Kのサブユニットp85αの機能を欠損させた動物は、注意欠陥多動性障害の動物モデルとして有用である。


出願番号:2004-370299 / 特開番号:2006-176428 / 登録番号:4923233

神経回路網再構築剤および神経回路網の再構築方法

【課題】アルツハイマー病、老年痴呆、脳血管性痴呆、パーキンソン病などの神経変性疾患は、病因は異なるがいずれも神経回路網の破綻により、記憶・認知に障害を呈する症候を指す。これら有効な治療法の無い疾患に対し、既に神経回路網の障害が進行している状態からでも、神経機能を正常に近づけることのできる治療が求められており、この治療に用いる薬物を開発を目的とする。

【解決手段】培養神経細胞において、軸索と樹状突起の萎縮、前シナプス数と後シナプス数の減少を呈する状態を作製した。この状態の神経細胞に処置することで、神経細胞の神経突起とシナプスを正常状態に戻すことのできる薬物を、伝統薬物中の成分から探索し、ウィタノシド類とその代謝物であるソミノンを同定した。さらにウィタノシド(withanoside)の代謝物および/またはアストラガロシド(astragaloside)代謝物は神経回路網再構築剤として有用であることを見出した。


出願番号:2019-549111 / 特開番号:WO2019/077810 / 登録番号:

ペリオスチン及びPKM2の分泌促進剤

【課題】筋細胞の増殖等に有用な剤又は組成物を提供する。剤又は組成物を、アクテオシド、エキナコシド及びこれらの塩から選択された少なくとも1種の成分(A)やペリオスチン及びPKM2から選択された少なくとも1種の成分(B)で構成する。

【解決手段】


論文

(1)A systematic strategy for discovering a therapeutic drug for Alzheimer’s disease and its target molecule

Yang Z, Kuboyama T, Tohda C

Frontiers in Pharmacology (2017) 8, 340.


(2)A Novel Rac1-GSPT1 Signaling Pathway Controls Astrogliosis Following Central Nervous System Injury

Ishii T, Ueyama T, Shigyo M, Kohta M, Kondoh T, Uebi T, Kuboyama T, Gutmann DH, Aiba A, Kohmura E, Tohda C, Saito N

J. Biol. Chem. (2017) 292(4):1240-1250


(3)Effects of Oleanane-Type Triterpene Saponins from the Leaves of Eleutherococcus senticosus in an Axonal Outgrowth Assay

Ge YW, Tohda C, Zhu S, He YM, Yoshimatsu K, Komatsu K

J Nat Prod. (2016) 79(7):1834-1841


(4)Extracellular vimentin is a novel axonal growth facilitator for functional recovery in spinal cordinjured mice

Shigyo M, Tohda C

Scientific Reports (2016) 6:28293


(5)The extract of roots of Sophora flavescens enhances the recovery of motor function by axonal growth in mice with a spinal cord injury

Tanabe N, Kuboyama T, Kazuma K, Konno K, Tohda C

Frontiers in Pharmacology (2016) 6:326.


科研費

(1)慢性期脊髄損傷の薬物治療;骨格筋萎縮と軸索断裂を改善する生薬医薬品の開発研究

基盤研究(B) 2017-04-01 ~ 2022-03-31


(2)伝統薬物をベースとした創薬―新しいパラダイムの創生―

挑戦的萌芽研究 2014-04-01 ~ 2017-03-31

本研究では、慢性期脊髄損傷に対する画期的治療薬の開発と、その分子メカニズムの解明を目的とする。ポイントは、機能回復が困難な複数の理由をそれぞれ解決する薬物を合わせたカクテル療法を目指す点にある。本年度は以下の成果を得た。 a)マイクログリアからの軸索伸展因子放出を活性化する薬物: 生後2日後のマウス大脳皮質から初代培養マイクログリアを単離培養し80種類の生薬エキスを処置し、conditioned mediumを取った。それらを別途初代培養した大脳皮質神経細胞に処置した。連翹水エキスを処置したマイクログリアconditioned mediumに、強い軸索伸展活性があることを見出した。b)運動ニューロンと骨格筋組織のシナプス結合を促進する薬物: マウス胎児後肢から骨格筋細胞を初代培養し、125種類の生薬エキスを処置し、conditioned mediumを取った。それらをマウス大脳皮質神経細胞に処置し軸索伸展活性を検討したところ、肉じゅう蓉水エキスに、骨格筋細胞からの軸索伸展因子放出活性があることを突き止め、放出される軸索伸展因子X(非公開)を同定し、それが脊髄の運動ニューロンに対しても軸索伸展作用を示すことを確認した。また、脊髄損傷マウス受傷後慢性期に入ってから、後肢に肉じゅう蓉水エキスを注射すると、運動機能が改善することを見出した。肉じゅう蓉水エキス中の活性成分Y(非公開)も見出した。c)CSPG上でも皮質脊髄路や介在ニューロンの軸索伸展を促す薬物: 昨年度の取組みで、軸索伸展阻害分子のCSPGをコーティングした培養皿上でも軸索伸展活性を有する生薬として苦参を見出し、その中の活性化合物としてmatrineを同定した。今年度は、matrineのシグナリングを明らかにする目的でmatrineの結合タンパク質を探索し同定に成功した(非公開)。


(3)慢性期脊髄損傷の回復を目指す研究-多能的新規化合物デノソミンの作用機序-

基盤研究(C) 0000-00-00 ~ 0000-00-00

脊髄損傷マウスに新規化合物デノソミンを経口投与すると運動機能が改善し損傷部位の軸索密度が回復することを見出しその作用機序を解析した。デノソミン処置により損傷部位にアストロサイトが増加し、アストロサイトからvimentinが分泌されること、細胞外から働きかけるvimentinの作用として軸索伸展の促進があることを初めて明らかにした。さらに、vimentinがのシグナリングを解析した結果、神経細胞上のIGF1受容体を直接活性化して軸索伸展を促進させる機序を初めて見出した。


(4)新規の抗痴呆薬となるwithanoside類を用いたシナプス形成機序の解明

基盤研究(C) 0000-00-00 ~ 0000-00-00

Amyloidβ(25-35)を脳室内投与したAlzheimerモデルマウスにwithanoside IVを経口投与すると、空間記憶障害の顕著な改善が認められた。また、amyloidβ(25-35)投与による脳内の軸索、樹状突起、シナプスの密度の減少が、withanoside IV投与群では正常群レベルにまで改善された。また、Withanoside IVを正常マウスに経口投与すると、物体認識記憶が有意に向上した。脊髄損傷に対するwithanoside IVの効果としては、損傷1時間後よりwithanoside IVを経口投与したところ、後肢運動機能が有意に改善した。またwithanoside IV投与群では、損傷部位に軸索が伸展し、脱落した中枢性ミエリンの代わりに末梢性ミエリンが増加していた。加えて、astrocyteが損傷中心部位に浸潤するように移動し、それによって凝集されたかのようにmicrogliaの集積部位が縮小した。また、軸索とミエリンの相互作用に関わる軸索上の分子であるneuregulin-Iが損傷中心部で減少したが、withanoside IV投与群では有意に増加した。
Withanoside lV経口投与後のマウスの血清中の代謝物を分析したところ、経口投与後すみやかにC3位の糖鎖が加水分解されたsominoneへと代謝されることが示された。Sominoneには神経突起伸展、シナプス形成作用があることが判り、経口投与したwithanoside IVの活性本体がsominoneであることが示唆された。
Tyrosineリン酸化受容体抗体アレイを用いた解析を行った結果、sominoneで刺激により神経細胞およびmicroglia上のRETと、神経細胞上のACK1が速やかにリン酸化されることと、両分子ともにsominoneによる樹状突起伸展活性に関与している結果が得られた。これまで記憶改善作用との関連ではRETやACK1はあまり着目されてこなかった。本成果により、神経回路網再構築による記憶改善作用の鍵分子としてRET、ACK1の役割が明らかになる可能性が示された。